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サテンパジャマはシルク(絹)か綿どちらがいいのか?比較検証してみました
- この記事の監修者岩本悠資
- 所属:岩本繊維株式会社 代表取締役
- 出身:1983年10月 京都生まれ
経歴 | 同志社大学経済学部卒業。 広告代理店入社、営業部配属。 岩本繊維入社後、日本全国の寝具専門店、家具店などの小売店への卸営業活動を経て、自社ECサイト「Living Mahoroba楽天店」「つくるパジャマ」オープン。睡眠健康指導士のアプローチで快眠に関する知識や寝装品、 パジャマ選びなどの情報をブログで発信。 |
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資格 |
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趣味 | 寝ること、育児、音楽鑑賞、お酒 |
つるつるすべすべした気持ち良い肌触り、美しい光沢、当店でも大人気のサテンパジャマ。そんなサテンパジャマにも綿とシルクの生地がありますが、実際どちらの方がいいのか?今回は、当店のシルクサテンパジャマと綿サテンパジャマで比較対決という形で検証してみました!
1.シルクサテンパジャマと綿サテンパジャマのご紹介
今回比べる、当店のサテンパジャマはこちら
シルクサテンパジャマ
・組成:シルク(絹)100%
・織り:サテン
・糸の太さ:タテ42デニール×ヨコ84デニール
・打込み本数:タテ300本+ヨコ120本
・原産地:中国(織り・染め)、京都(縫製)
スーピマ超長綿サテンパジャマ
・組成:綿100%(スーピマ超長綿)
・織り:サテン
・糸の太さ:80番手
・打込み本数:280本
・原産地:インドネシア(織り)、大阪(染め)、京都(縫製)
※デニール…シルクやポリエステルなどの長繊維(フィラメント糸)などに用いる糸の太さの単位。数が小さいほど糸は細くなります。
※番手…綿や麻などの短繊維(スパン糸)などに用いる糸の太さの単位。数が大きいほど糸は細くなります。
※打込み本数…生地の1インチ(2.5cm)間におけるタテ糸、ヨコ糸の合計本数。織り物における生地の厚みや重量などの目安にします。
2.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ 美しい光沢対決!
シルクサテンパジャマの方がより美しい光沢です
もちろん、スーピマ超長綿サテンパジャマも他の綿パジャマと比べると美しい光沢ですが、光沢はやはりシルクサテンパジャマに軍配があがります。
光沢が出る要因として、
・素材→シルクの方が綿や麻よりも美しい光沢が出ます
・織り方→サテン織りの方が平織などよりも美しい光沢が出ます
・糸の細さ→糸が細い方が美しい光沢が出ます
・加工→シルケット加工など、染め工程などで光沢感を増す加工があります
シルク繊維には成分として含まれているフィブロインというタンパク質成分があり、多孔質の三角形のような断面で光を乱反射するという特性(=プリズム効果)があります。
これが綿や麻などには持ち合わせていない、素材としてのシルク(絹)の美しい光沢の要因です。
サテン織りは経糸・緯糸ともに5本ずつで織られている生地で、表面には経糸か緯糸かのどちらかしか出てこない織り方のため、横か縦方向の繊維だけがきれいに揃って見えるため光沢が美しくなります。
また、生地に使用される糸は細ければ細いほど、光沢が出る傾向があります。
綿糸の場合、糸の太さのことを糸番手といい、番手の数が大きければ大きいほど、糸は細くなります。これは私の経験則ですが、40番手くらいの糸がパジャマでは市場によく出回っていますが、40番手くらいでサテン織りをしても大した光沢は出ません。60番手くらいだとサテン織りはもちろん、ローン織り(平織)でも光沢が出てきます。80番手以上の極細糸になってくるとかなりきれいな光沢が出てきます。
シルクの絹糸の場合、長繊維と呼ばれるフィラメント糸になるので、綿糸などの短繊維のスパン糸に比べ、美しい光沢が出ます。ポリエステル糸などもフィラメント糸になるので、
綿サテンとポリエステルサテンだとポリエステルサテンの方が同じ規格であれば光沢が美しいです。
また、シルケット加工などの染め加工などで光沢を出す方法もあります。
また、シルクも綿も使用していくうちに光沢が薄れていきますが、特に綿サテンパジャマの方が光沢が薄くなってしまいます。
3.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ つるつるすべすべ対決!
シルクサテンパジャマの方がよりつるつるすべすべ
つるつるすべすべした肌触りになる要因として
・織り方…サテン織りの方が平織よりもつるっと滑らかな肌触りになります
・糸の細さ…糸が細い方が柔らかく、滑らかな肌触りになります。
シルクサテンパジャマも綿サテンパジャマも同じサテン織りですが、やはり糸の細さが違います。
例えば、当店のシルクサテンパジャマですと、
・タテ糸42デニール→綿の糸番手では約120番手相当
・ヨコ糸84デニール→綿の糸番手では約60番手相当
(※デニールとはシルクやポリエステルなどのフィラメント糸の場合に用いる糸の太さの単位で、数が少ないほど糸は細くなります。)
つまり、綿サテンパジャマが80番手なのに対し、シルクサテンパジャマが1.5倍近く細いため、すべすべ感がかなり違ってきます。
ちなみに糸番手をかなり細いものでも、サテン織り以外の織り方や、編み物だとつるつるすべすべした肌触りにするのはかなり難しいかと思います。やはりサテン織りであることは必須ではないでしょうか。
その中で、糸の細さがよりつるつるすべすべを増す要因になります。
4.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ 吸水性、放湿性など機能性対決!
シルクサテンパジャマの方がより機能的
パジャマにとって大切な機能、「吸水性」「吸湿性」「放湿性」「肌のやさしさ」の4つの項目でシルクサテンパジャマとスーピマ超長綿サテンパジャマを比べてみましょう。
・吸水性…寝汗などをどれくらい吸ってくれるか
→綿も様々な素材の中でもかなり優れていますが、シルクは綿の1.5倍
※ちなみにポリエステルサテンなどには繊維自体に吸水性はありません。水を通過させるだけです。
・吸湿性…寝ているときの蒸れ感をどれくらいとってくれか
→綿も様々な素材の中でもかなり優れていますが、シルクの方がより高いです
※ちなみにポリエステルサテンには吸湿性はほぼないため、蒸れてしまいます。
サテンパジャマは綿とポリエステルどちらがいいのか徹底比較はこちら
・放湿性…生地が吸った湿気をどれくらい外に放出するか
→綿は吸水性・吸湿性が高いのにも関わらず、放湿性はあまりないため、洗濯後の速乾性はあまりありません。シルクは放湿性に優れているため、一日干しておくと、臭いも取れ、洗濯後の乾きも綿に比べると良いです。
※ちなみにポリエステルサテンは吸水性がない分、洗濯後の速乾性に優れています。
・肌へのやさしさ
→天然素材の綿も肌にやさしいですが、シルクは人の肌にかなり近い、弱酸性のアミノ酸タンパク質でできている繊維のため、より肌にやさしく、美容にも効果的な素材と言えます。さらにシルクには静菌作用もあるので、アトピーなどの敏感肌の方には、綿以上におすすめです。ただし、シルクに限らず動物性繊維にはアレルギーを持っている方もいるため、使ってみて肌に違和感や異変があった場合はすぐに使用を止めるようにしましょう。シルク繊維が日本アトピー協会から推薦をもらえないのは、こういったシルクアレルギーの方もいるためです。
5.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ シワになりやすさ対決!
シルクサテンもスーピマ超長綿サテンも同じくらいシワになりやすいので、引き分け
それでは皆さん気になる、洗濯後のシワですが、これはどちらもシワはできてしまいます。
綿繊維は水を吸いやすく、水を含むと繊維分子が離れてしまいます。その分子が動いたまま乾くとしわになったり、形が崩れてしまう原因となるわけです。
綿だけなく、麻やシルクなどの天然繊維も、吸水性がよいので、同じような理屈でシワができやすいです。
逆に、ポリエステルなどの化学繊維は吸水性がほぼないため、繊維自体が水を吸わず、含まないので、このような現象が起こらず、シワになりにくく、形も崩れないのはこういった理屈があるんですね。
(ちなみに、ポリエステル生地に水を落として、吸っているように見えるのは、繊維自体が水を吸っているのではなく、水が生地を通過しているだけなんです)
これは私見ですが、シルクサテンパジャマのシワの方が若干強いような気もします。
6.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ 耐久性対決!
スーピマ超長綿サテンパジャマの方が耐久性に優れています
生地の丈夫さの指標としては、「引裂き強度」「ピリング強度」「滑脱抵抗力」などがあります。サテン生地は摩擦に弱いのが定説ですが、当店のパジャマは両方とも摩擦による毛玉などは出来にくいです。(シルクサテンはピリング試験で4.5級!9等級中2番目に良い結果)今回は「引裂強度」と「滑脱(かつだつ)」について検証してみます。
引裂強度…生地の裂けやすさ
・シルクサテンパジャマ:タテ25.64N/ヨコ21.56N
・スーピマ超長綿サテンパジャマ:タテ19.1N/ヨコ16.9N
スーピマ超長綿サテンパジャマの方が強いですが、一般的なブロード生地で8N程度なので、シルクサテンパジャマも問題なさそうですね。
ただ、シルクは絹糸自体が滑りやすいため、縫い目滑脱(かつだつ)という現象が起こりやすいです。縫い目滑脱とは縫い目に力が掛かったときに、その部分の生地の構成糸が動いて縫い目が開いたり、縫い糸が外れることです。ですので、シルクパジャマは折り伏せ縫いやステッチなどをすることで滑脱しないような工夫をする必要があります。
ちなみに当店のパジャマはもちろん折り伏せ縫いをしております。
きちんとした仕様にしていれば問題ないですが、やはり綿サテンパジャマの方が耐久性は優れていますね。
きちんとしたお手入れをしていれば、シルクパジャマで2年以上、綿サテンパジャマで3年以上は使えますが、耐用年数で考えても、綿に軍配があがります。
※耐用年数はあくまで目安です。使用方法、環境、着られる方の体質などによって一概に言えません。
7.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ お手入れしやすさ対決!
スーピマ超長綿サテンパジャマの方が断然扱いやすい
パジャマのお手入れと言えば、やはり「お洗濯」!そしてその他にも取扱いに関する注意点があるのかを検証してみましょう。
洗剤・洗濯方法
・シルクサテンパジャマ
→手洗い(ネットに入れておしゃれ着洗いであれば大丈夫ですが、基本は手洗い)
→必ず中性洗剤
→乾燥機、漂白剤は×
・スーピマ超長綿サテンパジャマ
→家庭用洗濯機(ネットには入れてください)
→乾燥機、漂白剤は×
取扱い注意点
・シルクサテンパジャマ
→ひっかけ傷などが出来やすいので、優しく丁寧に使うことをおすすめします
→黄変(=おうへん。色が黄色くなる)しやすいので、直射日光にさらすのは×
→サテンは摩擦に弱いので、激しく摩擦しないよう気を付ける
・スーピマ超長綿サテンパジャマ
→サテンは摩擦に弱いので、激しく摩擦しないよう気を付ける
これだけ見てもやはり、デリケートなシルクに対して、綿は取扱いが非常に楽ですね。
また、シルクも綿も洗濯後のシワを軽減させる工夫として、脱水を控えめにして、干すときに生地を手で伸ばすとかなりマシです。
また、アイロンを当てるとシワは消えますが、シルクは当て布をして低温であてないと生地が変色してしまうので、ご注意ください。
8.シルクサテンパジャマVS綿サテンパジャマ 判定結果は!?
光沢・肌触り・機能面を重視するならシルクサテンパジャマ
同じサテンパジャマでも光沢や肌触りに関しては、綿はシルクにかないません。
また、シルクにしかない効能や機能もたくさんあります。
手軽さや耐用性を重視するならスーピマ超長綿サテンパジャマ
シルクは高価なだけあって、見た目や肌触りだけなく、たくさんの機能をもっていますが、デリケートで扱いが難しいところが一番のデメリットです。シルクに近しい光沢と肌触りを求めつつ、長く手軽に使うことを考えれば、綿に軍配があがります。
両者の特徴を理解して、ご自分にニーズに合ったサテンパジャマをぜひ選んでください!
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みなさんから頂く、シルクパジャマについてのよくあるご質問をまとめております
1.シルクパジャマって何が良いの?
綿素材と比べると吸水性、放湿性が1.5倍ほどあるので蒸れを感じにくいです。また、「生きた繊維」と呼ばれるシルクは、多孔質構造といって空気を繊維の中に多く含むことができ、熱伝導率が低いので夏場は涼しく、冬場は寒さを伝えにくく、内側の温度を一定に保つので暖かく感じます。
2. シルクパジャマの着心地は?
真珠の美しさに例えられるシルクは、滑らかな肌触りと蒸れにくいツルツルとした着心地が特徴です。また、人の肌成分に近いタンパク質由来の天然繊維だから人のお肌との相性が良いだけでなく、静電気も起こりにくく、ホコリも付きにくいところが特徴です。
3. シルク素材のデメリットって何?
紫外線を吸収する性質があるため日光に長時間あたると黄色く変色してしまいます。そのため直射日光を避けていただくなど注意が必要です。また、繊維自体が細いので摩擦に弱く傷が付きやすいというデメリットもあります。お洗濯の際も洗濯機ではなく手洗いが必要な繊細な素材でもあります。
4. シルク素材の洗い方は?
基本的には洗濯機を使わず手洗いがおすすめです。洗濯機を使用する場合は、洗濯ネットに入れおしゃれ着用中性洗剤もしくはシルク用洗剤を使用し、おしゃれ着用コースでのお洗濯がおすすめです。
5. シルクの匁(もんめ)とは?
匁(もんめ)とはシルクの生地の重さを表した単位のことで1匁≒3.75gです。数字が大きくなればそれだけ生地として厚みがあるもしくは密度の高いしっかりしたものになります。
6. シルクの生地の厚みは?
16匁未満の生地は薄手で軽く、19匁は軽くて少し厚みのある生地です。22匁だと柔らかすぎず厚すぎない程よい触感で、25匁以上になると密度のあるしっかりとした生地になります。
7. シルクサテンってなに?
「朱子織り」という経糸もしくは緯糸のどちらが生地表面に多く露出する織り方で織られた生地を総称して「サテン」と言います。この織り方をすることでサテン特有の生地の光沢感が出ています。つまりシルクサテンとは、シルク(絹糸)を朱子織りした生地ということになります。