パジャマペディア
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レム睡眠とノンレム睡眠の役割
- この記事の監修者岩本悠資
- 所属:岩本繊維株式会社 代表取締役
- 出身:1983年10月 京都生まれ
経歴 | 同志社大学経済学部卒業。 広告代理店入社、営業部配属。 岩本繊維入社後、日本全国の寝具専門店、家具店などの小売店への卸営業活動を経て、自社ECサイト「Living Mahoroba楽天店」「つくるパジャマ」オープン。睡眠健康指導士のアプローチで快眠に関する知識や寝装品、 パジャマ選びなどの情報をブログで発信。 |
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資格 |
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趣味 | 寝ること、育児、音楽鑑賞、お酒 |
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠の大きく2つに分けることができます。それぞれの睡眠がもつ役割は異なり、体や脳に及ぼす影響や効果も違ってきます。
この2つの睡眠の違いを正しく知ることで、睡眠によって得られるメリットなどの知識を深めることはもちろんですが、「何で夢ってみるの?」「私は何かしらの睡眠の病気かな?」などの様々な疑問や不安も解消するかと思います。
今回は、わたくし岩本が上級睡眠健康指導士として学んだ知識、日本睡眠教育機構のテキスト、睡眠学の権威である西野精治先生(スタンフォード大学医学部精神科教授、医師、医学博士)の著書「スタンフォード式 最高の睡眠」などを参考にして、レム睡眠、ノンレム睡眠についてご説明させていただきます。
そもそもレム睡眠とノンレム睡眠とは?
名前の由来と歴史
レム睡眠とはREM(Rapid Eye Movementの略)睡眠で、急速眼球運動が出現する睡眠のことを言います。
そしてそのまんまですが、ノンレム睡眠とはレム睡眠でない状態の睡眠のことをいい、人は一晩のうちにノンレム睡眠とレム睡眠を交互に4~5回繰り返しています。
レム睡眠は1953年にアメリカのユージン・アセリンスキーという科学者によって発見されたのですが、入眠後1時間~数時間後に急速眼球運動が発生し、その直後に被験者を起こすとかなり高い確率で夢を見ていたということが分かりました。
当時、急速眼球運動と夢が関連していることが注目を浴び、レム睡眠と名付けられて以来、レム睡眠は夢見睡眠などとも呼ばれ、レム睡眠状態でないノンレム睡眠の2つに睡眠は大きく分けられて現在に至っています。
どちらがレム睡眠状態でしょう?
こちらに猫の絵が3つあります。
一番左の絵はもちろん「覚醒」ですが、一番右の体の力が抜けてぐたっとなっている絵が「レム睡眠」、真ん中の体を支えて眠っている絵が「ノンレム睡眠」です。
この絵からすると一見、レム睡眠の方が熟睡しているように見えませんか?
そしてノンレム睡眠の方が体をしっかり支えているので、浅い睡眠のように見えますよね?
実はこれは違うんです。それは次の図を見ていただくとよく分かります。
レム睡眠とノンレム睡眠で、大脳と体のどちらが寝ているかが異なります
この図はレム睡眠とノンレム睡眠を理解する上で非常に大事な図です。
さらに睡眠のもつ役割とは何ぞやということも分かりやすく示してくれています。
ノンレム睡眠中においては、眠らせる脳である、中脳・後脳・髄脳(延髄)は大脳を眠らせ、鎮静化させています。意識・思考の脳である大脳が眠っていますが、体を操作する脊髄は起きています。
逆にレム睡眠中においては、中脳・後脳・髄脳(延髄)は大脳を活性化させ、体を操作する脊髄には不動化せよという指示を出しているというわけです。
睡眠とは脳による脳のための管理技術
睡眠を管理する脳が「眠らせる脳」(脳幹:中脳・橋・延髄)であり、管理の対象となる脳が「眠る脳」(大脳)です。
これをレム睡眠とノンレム睡眠がそれぞれの役割を果たしているわけです。
睡眠には体を修復する役割ももちろんありますが、人間ならではのこのような睡眠は人間の脳が大きく関係しています。
なぜ人間はこのような睡眠スタイルを築き上げたのか?
人間は成人であれば1日に約7時間ほど睡眠を取りますが、イルカやハエなどはほとんど寝ませんし、渡り鳥なんかは脳を半分眠らせて、片方の脳を覚醒させて飛行します。
生き物によっては人間と同じような睡眠を取ると生命の危機があるので、生き物によって睡眠のスタイルは異なってくるわけですね。
では、なぜ人間が他の動物と違って、このような睡眠をとっているのか。
その理由は大脳にあります。
人間は他の生物と違い、進化の末、高等な生物となりましたが、それは大脳の発達によるものといえるでしょう。
つまり、中枢神経系の最先端に最後に完成する大脳(終脳)は“高級な新製品”であるだけに性能はたいへん高いのですが、莫大なエネルギーを消費して活性酸素のような廃棄物を多量に出しますし、そのせいでもろくて壊れやすく、長時間の連続運転に耐えられません。
疲れやすい大脳をいつも安定した状態に維持するためには、定期的にうまく休息、鎮静化させ、そして休息した大脳をうまく覚醒(活性化)させるような管理技術、睡眠が必要なんです。
このことから睡眠は大脳のために創案され、進化してきた、言い換えると「大脳が睡眠を創らせた」ことになり、また睡眠のおかげで大脳はいっそう高い性能を獲得できることになります。
ですので、「睡眠が大脳を創りあげた」ことにもなります。
ここで睡眠の役割を整理しますと、「脳を創る・脳を育てる・脳を守る・脳を修復する・脳をよりよく活動させる」となります。
レム睡眠の役割は「脳を創る・育てる」
「脳を創る・育てる」は発達途上にある胎児の大脳に当てはまります。脳を活性化させ覚醒に導く睡眠、動睡眠と呼ばれるレム睡眠のことです。
実際、生まれてからも生後1カ月くらいの赤ちゃんの睡眠の半分はレム睡眠です。成長するにつれて少なくなり、成人で20%をきるようになっていきます。人間の意識ある人生は「夢見る眠り」から始まるというわけです。
ノンレム睡眠の役割は「脳を守る・修復する」
レム睡眠の役割が進行して大脳が覚醒できるようになると、すぐに静睡眠と呼ばれるノンレム睡眠が出現して「脳を守る・修復する」役割を担当します。
この役割は次第に比重を高め、覚醒量の増加とともにノンレム睡眠の量も増え、前述のとおり、その分だけレム睡眠は減っていきます。
ただ、成人になってからもレム睡眠は重要な役割を演じ続けていて、大脳が自動的に目覚められるのは、古くから脳内に宿るレム睡眠、つまり「目覚めるための眠り」が一定間隔で大脳を活性化するからです。夢が現れるのはその結果です。
ノンレム睡眠は深い睡眠で、レム睡眠は浅い睡眠?
ノンレムの睡眠段階3~4は深い眠り
こちらの図は人の一晩の睡眠周期と睡眠の深さをあらわす睡眠段階の経過です。
最初はノンレム睡眠から始まり、睡眠段階1というかなり浅い眠りから、睡眠段階2の少し浅い眠りになり、深い眠りの睡眠段階3になり、もっとも深い眠りである睡眠段階4へと変化していきます。ちなみに睡眠段階3、4の深い眠りを徐波睡眠といいます。
この睡眠段階1~4をノンレム睡眠と呼び、寝始めから90分ほど経過したあたりにレム睡眠が出現します。
その後はまたノンレム睡眠が出現し、またレム睡眠が出現するということを一晩で4回ほど繰り返します。
そしてご覧のとおり、ノンレム睡眠は第2周期目からは深い睡眠が減っていきます。またレム睡眠は第2周期目以降は増えていきます。つまり、どんどん脳と体の修復から起きるための睡眠に変わっていっているということです。
レム睡眠=浅い睡眠ではありません
また、レム睡眠中の脳波を測定すると、浅い眠りである睡眠段階1のときの脳波とほとんど同じであることから、レム睡眠=浅い眠りと勘違いされやすいですが、レム睡眠中は外部刺激に対する応答は著しく低下しているので、必ずしも浅い眠りとはいえません。脳波と睡眠の深さが一致しないことからレム睡眠は逆説睡眠と呼ばれることもあります。
また被験者の脳波だけではレム睡眠なのかノンレム睡眠の睡眠段階1なのか判別できないため、眼球運動とあごにあるオトガイ筋(レム睡眠中は骨格筋などが著しく弛緩することは前述の説明のとおりです)の筋電図の3つを同時測定することが必須となっています。
レム睡眠と夢について
なぜレム睡眠中に夢を見るのか?
レム睡眠中は脳幹のアセチルコリン細胞というところから発生する強い間歇的な刺激が大脳皮質に送られています。レム睡眠中に眼球が急速に水平に動くのは刺激の発生源に近い外転神経核が刺激されるためです。
レム睡眠発生部位である橋(pons)と、視覚中継部位である視床の外側膝状体(lateral geniculate body)と、視覚領のある後頭皮質(occipital cortex)に強い反応がみられたので、この刺激をPGO波と名付けられました。現在では、他の部位も刺激していることが知られていますが、視覚系が強く刺激されることは現在でも変わっていません。
夢に主として映像が現れる理由がこのPGO波の存在です。
夢のストーリーが荒唐無稽だったり、ちぐはぐだったりするのは、夢を見ているときは間歇的に現れるPGO波が記憶部位をランダムに刺激するためです。
目覚めているときはばらばらな情報が入ってきても、前頭前野がそれらを順序立てまとめられますが、寝ているときは出来ないためです。
また注意を払うのに必要なノルアドレナリン神経も働かないため、自分が夢を見ているという状態も認識できません。
夢はレム睡眠だけ?ノンレム睡眠中は夢を見ないのか?
レム睡眠中は、急速眼球運動が頻発する時期(phasic期)と、ほとんど出現しない時期(tonic期)があります。
phasic期で起こすと夢を見ていたという報告率が高まり、夢内容の明晰度も高くなります。
ちなみに急速眼球運動は夢を見ているときにその情景を追っているという説もありますが、これもきちんと解明はできていません。
私たちが睡眠中に見る生々しい夢体験はレム睡眠中に生じますが、ノンレム睡眠中でも夢を見ることはあります。
ノンレム睡眠中に見る夢とは?
眠りに入った瞬間を意識することはできませんが、うとうとしているときに多くの人々が歩いている、ガヤガヤしている、海に赤い太陽が沈むのを見た、本を読んでいても考えが混乱してまとまらない、などの夢を見ることがあります。これを入眠時心像といいます。
つまりレム睡眠時に見る夢とは異なるものです。
例えば、電車の中でつい寝てしまって見る夢も入眠時心像です。健常者であればレム睡眠は入眠から90分ほど経過しないと現れないので、電車でウトウトした程度ではレム睡眠にはなりません。
そもそもレム睡眠時は体を支える筋力が著しく低下するので、電車の中でレム睡眠になると倒れてこんでしまいますよね(笑)
レム睡眠時での運動
夢を見ている間も、脳の中では日常生活と同じように運動をしています。走ったり、話したり、食べたり、ケンカしたりです。そしてそれらの運動に対応する神経細胞も働いていますが、レム睡眠時は脳幹のアセチルコリン細胞が様々な経路を経て脊髄の運動神経が働かないよう抑制の命令を出しているため、実際に体が動き出すようなことはありません。
しかし、この抑制経路が脳幹の病気で障害を受けると、大脳皮質からの運動命令が実行されてしまい、静かに眠っていて、夢を見る状態になると、大声を出したり、突然起き上がって歩き回ったり、横で眠っている人に乱暴を働いてしまうことがあります。
これをレム睡眠行動障害と呼ばれています。
夢遊病とは?
かつては夢遊病と呼ばれていた睡眠時遊行症はノンレム睡眠時の徐波睡眠(深い眠り)中にみられます。
ノンレム睡眠中に中途半端に覚醒し、脳は半分寝ているような状態で体だけが動き出すような状態です。
徐波睡眠中は脳血流が低下し、この状態で起きてしまうと寝ぼけていることが多く、すぐにその場の状況把握ができないのが普通です。しかし、この状態でもベッドから落ちることもありませんし、寝返りをうつこともできます。
睡眠時遊行症が起こる原因は様々ですが、ストレスや遺伝、認知症などで引き起こされることがあります。
怖い夢を見たり、金縛りはなぜ起こるのか?
お化けに追いかけられたり、溺れそうになったりと夜中に怖い夢を見るのは、不安から引き起こされる場合が多いです。これは生存のために二度と失敗を繰り返さないために、有害となるものや不利な状況から回避するために機能する偏桃体が興奮するからであると考えられます。
目覚めているときに偏桃体が興奮すると、不安が引き起こされて危険を回避することができ、前頭前野の一部が偏桃体を抑制的にコントロールしているので、不安を抑えることができるわけですが、レム睡眠時には前頭前野の責任部位は活動を低下させているため、偏桃体をコントロールすることができません。
さらにこの状態では平静心を生み出すセロトニン細胞の活動が消失しているだけでなく、偏桃体は覚醒時よりも活動が上がっているため、不安は記憶から不安に関連した情報を引き出し、ますます不安な内容の夢を見ることになってしまいます。
また、寝入りばな(寝始めてから90分くらい)に金縛りにあうことがありますが、筋力が脱力し、体を動かせないレム睡眠下で、脳が半分覚醒したような状態を金縛り、または睡眠まひと言います。
体が動かないレム睡眠期に半分寝ていて半分起きている状況なわけですから、布団の上に誰かが乗っていて苦しい思いをしても声をあげて助けを呼ぶことができない、霊体験をしたかのように思うんですね。
大食をした後や不規則な生活をしている人、不安の強い人によく起こります。青年期によくみられますが、年をとると金縛りの回数は減少していきます。
レム睡眠に関連する睡眠障害
レム睡眠行動障害
先述したように、レム睡眠中に発生する睡眠障害で、レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder;RBD)というものがあり、端的にいうと、「夢の行動化」です。具体的には、レム睡眠中に異常な言動が認められます。
通常、レム睡眠中には筋肉は弛緩しており、身体が動くことはありませんが、レム睡眠行動障害では、レム睡眠中にも筋肉の弛緩が起こらずに身体が動く状態になっており、そこで夢を見てしまうと、その夢の中で言ったり動いたりしたことが、現実でもそのまま生じます。そのため、睡眠中に声が出たり身体が動いたりします。
レム睡眠行動障害は50歳以上の男性が多くみられます。各種の疫学調査から有病率は0.5%と考えられています。
レム睡眠行動障害は、基礎疾患を伴わない特発性レム睡眠行動障害と、他の疾患などに伴う症候性レム睡眠行動障害に大別されます。
頻度が高いのは特発性レム睡眠行動障害です。症候性レム睡眠行動障害の原因としては、アルコールなどの離脱時にみられるもの、三環系抗うつ薬やモノアミンオキシダーゼ(MAO-B)阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬剤が原因になるもの、パーキンソン病やレビー小体型認知症、多系統萎縮症などの神経変性疾患に合併するものなどがあります。
異常言動は、レム睡眠の割合が多くなる睡眠の後半に多く認められます。レム睡眠は約90分の周期で出現するため、極端な例では、異常行動もレム睡眠に合わせて約90分の周期で一晩に複数回認められることもあり、そのような症例は、レム睡眠行動障害の可能性が高いです。
異常行動の内容としては、笑う、話す、叫ぶ、怒鳴る、手足を動かす、起き上がる、歩く、壁を叩くなどの単純な動作から複雑な動作まで様々です。レム睡眠の終了とともに異常言動も治まり、再び通常の睡眠に戻ります。
一番の問題点は、比較的複雑な行動が生じた場合に自身が怪我をしたり他人に怪我をさせたりする可能性があることです。ベッドからの転落、家具や壁への殴打や追突などにより、自分自身に打撲や出血、骨折などが起こります。
また物を投げる、殴る、蹴る、はねのける、頭髪をひっぱる、首をしめるといった行動によって、ベッドパートナーに怪我を負わせます。
レム睡眠障害の症状の一番の特徴は、異常言動の最中に声をかけたり身体を揺らしたりして起こすと、容易に覚醒することです。
これは異常言動の最中に起こそうとしても、はっきりと覚醒することのない夜間せん妄やてんかんとの大きな相違点になります。
多くの場合で、覚醒時に直前まで見ていた夢の内容を想起することができ、異常言動はその夢の内容に概ね一致しています。
例えば、怒鳴ったり殴ったりする動作をしていた場合に起こすと、覚醒して「誰かが急に襲ってきたので、それに応戦している夢を見ていた」と話すといった具合です。
この例のように、夢の内容は何かに攻撃されたり追われたりといった不快なものが大半を占めます。
レム睡眠関連症状
レム睡眠は通常、入眠して60~90分後に出現しますが、特異ケースとして入眠後15分以内にレム睡眠が現れる場合があり、これを入眠時レム期と言います。
ちなみに過眠症として有名な「ナルコレプシー」という病気があります。
症状の代表例として下記の5つがあります。
1.日中に過度な眠気(EDS)に襲われ眠ってしまう睡眠発作(sleep attack)
2.覚醒時に突然筋緊張が低下し、顎が外れそうになったり、床に崩れ落ちてしまう情動脱力発作(cataplexy)
3.レム入眠時に脳だけが覚醒してしまい、意識はあるけど身体が動かない、いわゆる金縛りと言われる睡眠麻痺(sleep paralysis)
4.就寝直後に自覚的に目が覚めているときに経験する幻視体験である入眠時幻覚(hypnagogic hallucination)
5.日中の居眠りの多さから生じる夜間睡眠分断(sleep fragmentation)
このうち2・3・4は入眠時レム期に密接に関連していることからレム睡眠関連症状と呼ばれています。
ノンレム睡眠中に行われること
代謝を良くし、筋肉や骨を強くする
寝始め90分の深いノンレム睡眠中は「ゴールデンタイム」といわれるくらい大切な時間です。
体の成長や修復、疲労回復に重要な役割を果たしている成長ホルモンは、第1睡眠周期の深い睡眠であるノンレム睡眠中、つまり寝始めの90分に分泌量が最大となります。
成長ホルモンのおかげで筋肉や骨は強くなり、代謝が正常化されます。
また、成長ホルモンと構造が近い、生殖や母性行動に関与するプロラクチンも最初のノンレム睡眠で多く分泌されます。
この一番深いノンレム睡眠の質が悪かったり、外部から疎外されたりすると、グロースホルモンが正常に分泌されないので要注意です。
ちなみに長く起きていると「眠りたい」という睡眠欲求(「睡眠圧」)が高まり、最初のノンレム睡眠でその睡眠圧の多くが解放されるということも分かっています。
つまり、昼寝などで体や脳を休ませて日中のパフォーマンスを上げることも大切ですが、その反対に日中に睡眠圧を高めておくことで、眠りのゴールデンタイムといわれる最初のノンレム睡眠の質を上げることが出来ると言えます。
また、「睡眠の役割」を知るために、ノンレム睡眠の断眠実験をおこなった結果、最初の90分を阻害すると、その後の睡眠は計測不能となるほど乱れてしまい、実験が継続できなくなるということも分かっています。
ですので、寝たばかりの人を起こすのは極力避けるようにしましょう。
免疫力を高める
ホルモンは免疫とも連動しているため、風邪やインフルエンザ、がんなどの免疫力をつけるためにも非常に大切です。
睡眠が不適切になると、ホルモンバランスが崩れ、免疫の働きもおかしくなるため、「風邪は寝て治す」というのは免疫力向上と休息の面では理にかなっていると言えます。
実際、インフルエンザの予防接種でワクチンを取り入れても、睡眠が乱れていると免疫が確立せず、ワクチン接種の効果が認められないという報告もあるほどです。
また、リウマチなどの自己免疫疾患やアレルギーは、天候など様々なものがトリガー(引き金)にはなりますが、免疫機構とも大きく関わっています。つまり、睡眠時の免疫増強がきちんと働いていないと、アレルギーが悪化する危険性もあるということです。
お肌のメンテナンスやアンチエイジング効果
皮膚の保水量は睡眠で上がりますが、これは肌の水分が、睡眠と密接につながっている性ホルモンや成長ホルモンの影響を受けるからです。
また、グロースホルモンは、その名のとおり子どもの成長に関与するだけでなく、大人の細胞の増殖や正常な代謝を促進させる働きがあるため、「アンチエイジングに効果がある」などともよくいわれています。
能力の向上をもたらします
記憶力や運動技能なども睡眠中に向上することが様々な実験から報告されています。
・睡眠初期の深いノンレム睡眠
→嫌な記憶を消去
→単語や場所の記憶が向上
→認知技能(※)の記憶が向上
※一定のルールに基づいて一連の手続きを実行する能力
・朝方の浅いノンレム睡眠
→運動技能の記憶が向上
ノンレム睡眠、レム睡眠を数セット繰り返し、時間がたつとともに浅い睡眠に移行する中で、記憶が整理され定着していきます。
記憶というと、インプットばかりに意識がいきますが、嫌なことや不要なことを忘れるのも大切な作業です。
入眠直後の最も深いノンレム睡眠のときに海馬から大脳皮質に情報が移動し、記憶が保存されるという報告もあります。
豆知識
短時間睡眠者はレム睡眠時間が短く、長時間睡眠者は深いノンレム睡眠時間が短くなりやすい
睡眠時間が短い人と長い人とでは、睡眠前半に発生する深い睡眠(専門用語で徐波睡眠といいます)の量は実はあまり変わりません。
浅い睡眠やレム睡眠の量が長時間睡眠者の方が増える傾向があります。
ちなみに一般的には、6時間以下の睡眠時間の人を短時間睡眠者(ショートスリーパー)、9時間以上の睡眠の人を長時間睡眠者(ロングスリーパー)と分類されています。
■日本睡眠教育機構 監修、睡眠検定ハンドブック(出典もとはこちら)
https://www.zenniti.com/f/b/show/b01/569/zc01/8.html